ご両親が大阪芸術大学出身だった岡太地監督。「ヘンな大学だけど、いいんじゃない?」という珍しい(?)アドバイスに多感なお年頃の彼は「俺はオカタイ職業につくんや!」と反発。しかし、希望の大学入試に失敗し、挫折。興味本位で大阪芸術大学を見学し、受験する運びとなる。だが、そんなに甘い話があるはずもなく、アート関連に知識も興味もなかった彼は見事に落選。後期試験でなんとか入学することになった。

−ダイゲイに入学するまで、映画を制作する側のことを意識して見ていたことはなかったんですよね

「僕がよく映画を見ていたのは『X-ファイル』やブラピ、猟奇モノが流行っていた頃で、洋画を主に見ていて、邦画は好きではなかったんですね。でも、大学で映画の作法や作る技術を知るとめちゃくちゃ楽しくてのめりこんでいきました。周りは映画マニアばっかりだったので、負けてたまるかと思って映画を見まくったのもダイゲイ時代でしたね。あと先輩についていって現場現場の毎日でした」

−日本映画が好きではなかった理由は

「たぶん、洋画のほうが自分の日常の世界ではないものが見られるからじゃないですかね。卒業制作にとりかかる時期になって、じゃあ自分の好きな日本映画は、というのを考えて、伊丹十三の『あげまん』は小さい頃に見て面白かったなぁと思い出して、改めて見るとコレだと。それから伊丹監督の作品を全部見たらすごくいい! 伊丹さんの世界というか空気感がカッコいいんですよ」

−卒業制作作品の『トロイの欲情』は、まんま伊丹十三の作風ではないですね

「そうですね。実際、画コンテを書き、いざ撮影にといった段階になって、どこかで見たことのあるカットばっかりで、こんなの俺でなくてもいいやん!って思ったんですよ。ダメだ撮れない、ってカメラマンに相談にいったらものすごく困惑されて。伊丹十三監督が好きなんだったらアップとか寄りのシーンを多くすればって呆れ気味にアドバイスされて、そのとき僕も、話してくれたカメラマンもピンと来るところがあったんですよ。それから、カメラワークをアップとか寄りだけ出来るように、脚本を全部書き直したんです。
  登場人物のアップばかりなので、彼らの置かれている状況や距離感が伝わらない。場面の状況を伝えるためにはどうすればいいのか、セリフで説明させると野暮だなとか、役者の表情はどうすればいいのかとか、顔の向き、身体の向き…そういうのを全部考え直しました。脚本や画コンテの直しで徹夜作業は続きましたけど、自分の中で映画制作とはどういうものなのか、ということが再構築されたんだと思っています。意味というか意図というか。それが『トロイの欲情』に集約されていると思います」

−結構な自信作になったんですね

「いや、正直どうなんだろう?と思ってましたよ。ある日、先生2人に見せる機会があったんですが、怒られるんだろうな、とビクビクしてました。そうすると、褒めてもらえたんですよ。僕としては、これしか出来ないです!っていう作品だったんですけど、結局、研究室賞というものをいただけて初めて、自信を持てたわけです」


−卒業後、PFFに応募されて準グランプリを受賞されるわけですが、その経緯は

「卒業生はみんないろんな映画祭に自分の作品を送ってたんですよ。僕も20ぐらいの映画祭に『トロイの欲情』を送りました。それで、京都国際学生映画祭とPFFにうまくひっかかってくれて、まさかの準グランプリをいただけました(笑)。PFFでは関東の人たちのちゃんとしている作品を見て、まんま「なんで、ちゃんとしようとするんやろう?」って思ったりしてました。でも、そこで東京の人たちとの交流が出来て良かったです」

−その後、2本を撮られたわけですが

「1本は、大阪市映像文化振興事業 シネマアスト・オーガニゼーションというところでの企画コンペに入選し、助成金をいただいて『放流人間』という作品を撮りました。もう1本は文化庁委嘱事業「若手映画作家育成プロジェクト」で企画が通って制作させていただいた『屋根の上の赤い女』という作品です。この2本がたまたま制作時期が重なったんです。俺の力量からするととてもじゃないけど、無理だと。でも、企画が通って映画が撮れるなんてすごいチャンスじゃないか! やろう!と。これを乗り切れば何かが見えてくるんじゃないかと思ったんですね」

−今度、それら2本と『トロイの欲情』をあわせて、池袋シネマ・ロサで特集上映を行うことになっているんですよね

「関西時代も含めて、初めての劇場公開(興行)です。友だちを呼んで、という感じではなく、完全アウェーでやってみたいと思ったんです。不安はあるんですが、勝負をしなければ、という焦燥感が強いんですよ。若いうちにもっともっと映画を撮らないと自分がダメになってしまう、そんな焦りです。そういう意味で東京という場所でもっともっと勝負を賭けていきたいなぁと思ってます」
  岡太地監督

'80年京都府出身。卒業制作作品『トロイの欲情』がPFFアワード2006で準グランプリを受賞。池袋シネマロサにて9/15(土)より新作2本『屋根の上の赤い女』、『放流人間』と『トロイの欲情』とで特集上映される


屋根の上の赤い女
『屋根の上の赤い女』

トロイの欲情
『トロイの欲情』

放流人間
『放流人間』

9/15(土)〜9/21(金)、池袋シネマ・ロサにて公開

公式サイト:
http://www.yomosuga-love.com/yane.html





 








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