
大阪芸術大学のことは受験時まで知らなかった北海道帯広出身の熊切和嘉監督。ただ「16mmフィルムを1年生のときから使わせてくれること」に感動したのだとか。そして、好きだった映画の舞台が大阪だったので、街自体に興味を覚え、「東京には後々行くんだろうし」と大阪芸術大学を選ぶことに。
−大学に入る前は、ダイゲイのことはまったく知らなかったと聞いていますが
「そうですね。大阪の街には関心があって『ガキ帝国』や『どついたるねん』、あと『風、スローダウン』がすごく好きだったんですよ。でも、ダイゲイにいってみると、全然僕がイメージしている大阪の風景とは違った。自然に囲まれた場所にポツンとある感じで。それに、そこにいる人たちは奇抜な人ばっかりだったので、最初は田舎者だって思われないようにってことを気にしてたんじゃないかなぁ」

−熊切さんは『鬼畜大宴会』でダイゲイの伝説の男!のようなイメージがあるんですが、入学当初からリーダーシップを発揮されていたんですか
「全然、そんなことないです。間違いなく、クラスの主流ではなかったですね。授業では、みんなで分担して映画作りをするという感じだったので、そういう集団的な動きにイマイチ乗れなくて。先生たちにもなじめなかったですしね。なんか違うよなぁっていう集団に対するフラストレーションと、以前から考えてたアイデアがミックスされたのが卒業制作の『鬼畜大宴会』につながったわけです。似たような性格だった財前(智宏)と動き始めて、やがて仲間がわらわらと集まってきた、そういう感じでしたね」
−山下敦弘監督もその頃、一緒に知り合ったんですよね
「そうですね、何も知らない若者たちを巻き込んでいったという(笑)。実際、ノブ(山下敦弘)とかコースケ(向井康介)らとは話が合ったんですよ。ジャッキー・チェン→ホラー→アメリカン・ニュー・シネマという映画の興味の移行の仕方も似ていた。一晩中映画のことを話し明かすということもありましたね。そういう共有した感性があったから、撮影現場にもスムーズに入れたのかもしれないです。ノブとか向井とか撮影の近藤龍人ら“どんてんチーム”はマジメだったので、協力してくれたっていうのもあるのかもしれないです。彼らには良い失敗例を示せたともいえます(笑)」

−『鬼畜大宴会』は相当ハードな撮影現場だったっていうのはよく聞きます
「ずーっと失敗、トラブルばっかりだったけど、なんとかすり抜けられました。いま思えば集団ヒステリーみたいな感じだったのかもしれないですね。僕自身、強迫観念的に取り組んでましたから。たとえば血(糊)の色に異様にこだわったり。この色じゃないと、映画全体がダメになってしまう、それぐらい思い込んだりとか。血(糊)の量とかも撮影が再開するたびに増えていったりしてね。もちろん編集の段階で変になっているのを気付くんですけど。まぁ、そういうところはこの前の『フリージア』でも同じような感じで、気付くと辺り一面血の海になっていたりしてました。血(糊)に関しては変わらないんでしょうね(笑)」
−失敗ばっかりとおっしゃいましたが、今考えれば役に立っていることも多いのでは
「そうですね、試行錯誤のなかで覚えていったので、どういう風にすれば映画は作られていくかというのをイチから実践出来たわけです。そうこうしているうちに、先生たちにも僕たちの熱意が伝わったらしくて、毎日毎日撮影機材を借りにいってたので顔を覚えてもらえました。で、完成前の作品を見てもらったり、見た先生がまた別の先生に話してくれて、また別の先生が見にきてくれて編集面でのアドバイスをいただけたり。卒業制作の段階でようやく仲良くなれたっていうのも変な話ですよね(笑)。
でも、編集作業があんなに大変だったとは知らなかったです。あれが一番無駄が多かったのかなぁ。今ならいったんハマると少し時間をおいて客観的に、とかがわかるんですけど、当時はヒトコマ切って貼って、やり直して貼って、というのを徹夜でずーとやってましたから。で、結局あんまり進んでなかったりするんです。」
−そういう盲目的に必死になっていた頃に戻りたいなぁって思うときはありますか
「まったくないです(笑)。貧乏だったし。でも、ダイゲイにいって良かったと思ってます。若いときに東京とか情報が多いところに出てきてたら絶対ブレてたと思います。ああいうところ(笑)にこもって、自分の世界だけで突き進む。そんな体験はある種、貴重なことですよ。そのときの友達たちとも今でも付き合えている。そういうベースの部分を固めるためだけに行ってた、というのは大げさかもしれないけど、そんな感じです」
|
|


74年北海道出身。卒業制作作品『鬼畜大宴会』がPFFアワード1997で準グランプリを受賞し、翌年一般公開され話題を呼ぶ。PFFスカラシップで『空の穴』を制作、あの菊池凛子が主演を勤めた。代表作は『アンテナ』『爛れた家
蔵六の奇病』『青春☆金属バット』『フリージア』ほか

『フリージア』
初回限定特典/¥5,040(税込)/9/25(火)発売/発売元:小学館/販売元:バンダイビジュアル

公式サイト:http://www.freesia-movie.com/



 |